ネットラジオ放送者のためのサウンド設定講座

最近ネットラジオを放送する人が増えていますが、そのために必要なサウンド設定の方法を正確に理解している人が意外に少ないみたいなので、この文章を書くことにしました。
もちろん、必ずしも全て理解しなくても放送はできるのですが、知っておけば仮に音声面でトラブルが発生したとしても対処法がわかるだろうし、またボイスチャットを介してゲスト放送を行う場合は、この辺の知識は必須かと思われます。

なお、この文章はWindowsXP Home Editionを使っていることを前提として書かれています。
まぁ他のWindows系のOSでも基本的な操作は同じかと思いますが(Win3.1とかは知らんけど)。
MacOSとかUNIXとかはわかりません。ごめんなさい。

livedoorねとらじの「ねとらじ放送者のためのミキサーコントロール学」も参考になるかと。
http://blog.livedoor.jp/ladio_guide/archives/13606858.html

ボリュームコントロールを出現させる

音量調節のためのウィンドウは「ボリュームコントロール」ウィンドウです。
次の図のような格好をしています(デバイスによって違いはあります)。

ボリュームコントロール

この窓を表示させるためには、タスクトレイ(タスクバー右端のアイコンが並んでいるところ)からスピーカーのアイコンをダブルクリックすればOKです。

タスクトレイのアイコン

タスクトレイ上にこのアイコンがない場合は、「コントロールパネル」で出すように設定する必要があります。
コントロールパネルの「サウンドとオーディオデバイスのプロパティ」(あるいはそれに類するもの)を開き、「音量」タブの「タスクバーに音量アイコンを配置する」にチェックを入れればOKです。

ボリュームコントロールとサウンドデバイスの関係について

さてここからは、サウンドデバイスがやることについて知っておく必要があります。
サウンド関連のハードウェアにはサウンドカードとかUSB接続のやつとか、あるいはマザーボードにすでに機能として搭載されているもの(オンボード)とかがありますが、それらを総称して「サウンドデバイス」ということにします。

我々は普段「PCで音が鳴っている」といいますが、PC上のデジタル信号をアナログに変換して、聴けるようにする(あるいはアナログ音声をデジタルデータに変換する)のがサウンドデバイスの役目です。
まぁ簡単に言ってしまえば、音の鳴り方を調節するためにはサウンドデバイスの設定をいじってやればいいのです。
そのための方法が、前述の「ボリュームコントロール」を使うという方法です。

これだけなら話は簡単なのですが、ここでネットラジオ放送をややこしくしている問題が出てきます。
(といっても解ってしまえば、問題どころかむしろ有用な機能なのですが・・・。)
それは、「ヘッドホン(スピーカー)で鳴る音声と、PC上のソフトウェアに渡される音声は同じではない」ということです。
・・・つまり、たとえばSHOUTcast DSPを使って放送していたとすると、自分がヘッドホンで聞いている音と同じ音が、必ずしも放送に乗っている訳ではない、ということです。

どういうことなのか、ボリュームコントロールと絡めながら説明していきます。

再生コントロール=「サウンドデバイス上で鳴っている音声」

PC上、あるいはその周辺機器には、音声のソースになるものがたくさんあります。
・PCのソフトの機能として鳴る音声(Wave音源)
・MIDI音源(ソフトシンセサイザー)
・CDプレイヤー
・マイクからの音声
・・・etc.

これらのソースからの音声は、全てサウンドデバイス上で再生されます。
そしてその音声は、そのサウンドデバイスに接続されたヘッドホン(あるいはスピーカー)で聴くことができます。

この再生される音量を調節するのが、前述の「ボリュームコントロール」ウィンドウです。
後述の「録音コントロール」と区別するため、こちらを「再生コントロール」と呼ぶことにします。

再生コントロールには、先ほど挙げたようなさまざまなソースが並んでいます。
(デバイスによって表示に違いはあります)
たとえば「Wave」の音量を上げればサウンドデバイス上で再生されるWave音源の音量が上がる、「Microphone」ならマイクから入った音声の音量が・・・といった具合です。
ヘッドホンやスピーカーを接続して音声を聴いてみれば分かるかと思います。

なお表示されていないソースがある場合は、ボリュームコントロールのメニューの「オプション」から「プロパティ」を選ぶと、次のような設定窓が表示されます。

ボリュームコントロールのプロパティ

この窓の「表示するコントロール」で必要なものにチェックを入れてOKボタンを押せば、チェックの入ったソースが再生コントロールに表示されるようになります。
(必要なソースが「表示するコントロール」のリストにそもそも入っていない場合は、そのデバイス自体がそのソースに対応していません。)

なお「ミュート」にチェックを入れると、そのソースの音はまったく再生されなくなります。
ネットラジオ放送をする分には入れる必要はないかと。

録音コントロール=「アプリケーションに渡される音声」

さてボリュームコントロールには、これまで説明してきた「再生コントロール」の他に、もうひとつの面があります。
先ほどの「プロパティ」窓の「音量の調整」で「録音」の方を選択してOKボタンを押すと、ボリュームコントロールに表示される項目が変化します。
(こちらもデバイスによって違いはあります)
このウィンドウを「録音コントロール」と呼ぶことにします。

録音コントロール

録音コントロールは「録音」という名がついているので混乱しがちですが、その実は「サウンドカード上で鳴っている音のうち、どのソースの音声をアプリケーションに渡すか」を設定するという機能です。
(アプリケーションとは、たとえばSHOUTcast DSPやoddcast DSP、Skypeなど音声を取り込んで処理を行うソフトのことです。)
サウンドカード上では前述のとおりWave音源やマイクなどさまざまなソースの音声が鳴っていますが、録音コントロールはこのうちどれをソフトウェアに渡すか選り分ける、という訳です。

たとえば「Microphone」を選ぶと、ソフトウェアにはマイクからの音声だけが渡され、その他のWave音源などの音声は渡されません。
これはネットラジオ放送の場合でいえば、マイクからの音声だけが放送に乗り、BGMは放送に乗らないということです。

では、BGMとマイク音をともに放送に乗せる、すなわちサウンドカードで鳴っている音(=ヘッドホンで聞こえる音)を全てアプリケーションに渡すためにはどうすればよいか?
このためには、録音コントロールで、ソースとしてサウンドミキサーを選択します。
サウンドミキサーはデバイスによって表示される名前が異なります(再生リダイレクト・ステレオミキサー・ミックスアウトプット・ループバック・Digital Mixer・Record Master・Record Mixer・Stereo Out・Stereo Mix・Sum・Wave出力ミック・WhatUHear・Wave Out Mixなど→http://miyazaki.cool.ne.jp/mnokuni8a/sindex.shtmlを参照)。

※ステレオミキサーが「表示するコントロール」のリストにも入っていない場合は、デバイスの機能上音声のミックスができません。
  ・・・これは諦めるしかない。

まとめ

いろいろ言ってきましたが、とりあえず要点をまとめてみるとこんな感じです:
再生コントロールは、サウンドカード上で鳴る音の音量を調節する。
録音コントロールは、どのソースをアプリケーションに渡すか選択する。
・録音コントロールでサウンドミキサーを選択すれば、サウンドカード上の全てのソースをアプリケーションに渡せる。

実際に放送をする場合

ここまでは「ボリュームコントロール」の機能を説明してきました。
ここからはこれを踏まえて、実際に放送をする場合の音量設定の仕方を解説します。

まず録音コントロールの方ですが、BGMを流しながら喋るというのが一般的なので、ソースはサウンドミキサーを選択します。
(Microphoneを選択すると、音声だけが放送に乗りBGMは乗りません。)
音量は(リスナーからよっぽどうるさいと言われない限り)最大にしておいていいでしょう。

続いて再生コントロール
サウンドカードで鳴っている全ての音声を放送に乗せることになるので、個々のソースの音量は再生コントロールで調整することになります。
BGMの音量はWaveで。
マイク音声の音量はMicrophoneで調整します。
(喋らずに音楽だけ流す時は、Microphoneをゼロにして、Waveの音量を上げればOK。)
Microphoneの方にミュートが入っていると、喋ってもその声が全く放送に乗らないので注意!

再生コントロールの音量調整に関しては、一度テスト放送を行って、リスナーの皆さんの反応を見てみることをお勧めします。
あるいはSHOUTcast DSPを使っている場合なら、SHOUTcast DSPのウィンドウに放送に乗る音のレベルメーターが表示されているので、このメーターの表示を見ることによって放送の音量を確認することもできます。

SHOUTcast DSPの音量メーター

ねとらじミキサー

ねとらじミキサー(http://tk.no-ip.info/)は、ネットラジオ放送における音量の切り替えをボタンひとつでやってくれるソフトです。
詳しい使い方は、livedoorねとらじの「PTT(Push To Talk)について」(http://blog.livedoor.jp/ladio_guide/archives/13606907.html)をご参照ください。
以下、そのページから引用:

一般的にねとらじミキサーやSHOUTcastDSPを使用して音量調節を行いますが、これらを使用しなくても放送することはできます。
ではなんのために使うのかというと、一度設定してしまうと設定を覚えていてくれるので便利だからです。

トーク+曲の放送をするためには、録音コントロールを再生リダイレクト(参考:再生リダイレクトについて)に設定し、再生コントロールのマイクとWaveを調整する必要があります。
トークのときはマイク音量を大きく、Wave(曲)音量を小さめにする必要がありますし、曲のみのときはマイク音量を0、Waveを大きくする必要があります。外付けのミキサーならば2つのつまみを操作するのは簡単ですが、マウスで毎回操作するのはけっこう面倒です。(面倒でないなら再生コントロールをつねに表示しておけば、ねとらじミキサーやSHOUTcastは必要ありません。)

その2つの設定を覚えておいてボタンひとつで切り替えてくれるのが、PTT(Push To Talk)です。

では、ねとらじミキサーの使い方(要点)を説明します。
開発者のサイト http://tk.no-ip.info/からねとらじミキサーをダウンロードして解凍し実行すると、次のようなウィンドウが表示されます。

ねとらじミキサー

ウィンドウの下のほうにある、マイク「PTT」「Lock」のボタンを用いて、音量を切り替えます。
(「ライン」の方のボタンは使いません)
「PTT」はPush To Talkの略です。ボタンを押している間だけ、再生コントロールのマイクの音量が上がり、マイクの音声がミキサーに入ります。
「Lock」はPTTボタンを押しっぱなしにした状態を実現します。

再生コントロールを開いた状態でねとらじミキサーのPTTボタンやLockボタンを押すと、再生コントロールの音量が変化するのが確認できるかと思います。
放送する場合は、喋るときはLockボタンを押してマイクの音量を上げておき、休憩して音楽だけを流すときはLockボタンを解除すればWave音源のみの再生になります。

なお、このねとらじミキサー、デフォルトの設定ではLockボタンを押すと再生コントロールのWave音源の音量を変化させるようになっていますが、個人的にはあまりオススメできません。
例えばCDプレイヤーからの音声をBGMとして使いたい場合、CDプレイヤーの音声はWave音源の管轄ではないので、ねとらじミキサーではその音量を操作できないのです。
このような問題があるため、僕はねとらじミキサーの設定(メニューから「設定」を選択)で、「Waveの代わりにWinampの音量をコントロールする」にチェックを入れています。
この項目にチェックを入れると、再生コントロールのWave音源ではなく、Winampの音量ツマミの方がねとらじミキサーに連動するようになります。
(まぁWinamp以外のプレイヤーで放送する人にとっては意味がありませんが・・・。)

応用問題:ゲスト放送でトークバックが発生するのはなぜか?

最後に、これは必ずしも必要ありませんが、この記事の内容の理解度を確認するためにはちょうどよい題材なので、ひとつ問題を。
ここまでの内容がしっかり理解できていれば、難なく分かるかと思われます:

MSN MessengerやSkypeにはボイスチャット機能がついており、これを用いれば音声で会話をすることができます。
つまりボイスチャットソフトとSHOUTcast DSP(あるいはoddcast DSP)を併用すれば、ボイスチャットの会話を放送に乗せることができるのですが・・・
このとき、ボイスチャットの相手には、自分自身が話した声が戻って聞こえてくる現象(トークバック現象)が発生してしまいます。
なぜ、このような現象が起こるのでしょうか?


答え。
自分の声(マイク入力)と相手の声(Wave音源)をともに放送に乗せるので、録音コントロールは「サウンドミキサー」を選択しているはずです。
ところが録音コントロールの影響を受けるのはSHOUTcast DSP(あるいはoddcast DSP)だけではありません。
入力された音声を処理するという点で、ボイスチャットソフトも録音コントロールの設定に従うのです。
したがってボイスチャットソフトはサウンドミキサーの音源をチャットの相手に送ります。
すなわち相手には、自分の声だけでなく相手自身の声も送られてしまうのです。
※なお放送を行わない、通常のボイスチャットでは、録音コントロールはマイクを選択しておけばトークバックは発生しません。

補足:
この方法でゲスト放送が行えるのはWindowsXPのみです。
Windows2000、WindowsMe以前のOSではこの方法は使えません。
また上述のとおり、トークバックはサウンドデバイスの仕様上不可避ですが、サウンドデバイスを2つ使用することによってトークバックを回避することができます。
また、WinXP以外のOSでもその方法を用いればゲスト放送は可能になります。
この記事の本筋からは外れるので詳しくは書きません(また別の機会に書くかもしれません・・・)。

最後に

・・・とまぁ、長々と説明してきましたが、結局は「習うより慣れよ」だと思います。
まずはボリュームコントロールををいろいろいじってみて、それで音量メーターがどう反応するか観察してみてはどうでしょうか?(無責任・・・)

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